2013年10月5日土曜日

くじけても、もう一度立ち上がれ! セルフディスカバリーアドベンチャー in王滝 クロスマンテンバイク100km


去る9月15日、
自分との闘いに挑んできました。


日本で最も過酷なアドベンチャーマウンテンバイクレース

「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝 クロスマンテンバイク100km」

通称「SDA王滝」。



その名の通り
「自己発見の冒険」
100kmの間は、補給も、食事も、トラブルも、
全て自分で何とかしなければなりません。


自転車に乗っている方だとすれば「たかが100km」と思った方もいると思いますが、
オフロードのマウンテンバイクの100kmはロードバイクで200km走るのと同じかそれ以上に過酷。

日本で最も過酷なロードレース「ツールド沖縄210km」でトップ5に入っている方でも、
王滝100kmの方が比較にならないくらい辛いと言っていました。


その過酷さゆえに、
SDA王滝100kmを完走したライダーは「勇者」と呼ばれるほどです。




舞台は、長野県と岐阜県を跨ぐ山深い林道。

普段は林業のかた以外は立ち入り禁止となっている、
いわば秘境のような場所です。

そのような大自然の中で自分との闘いを出来ることが、
このレースの最大の魅力です。


僕は過去5回 100kmに挑戦して、

リタイア、リタイア、完走、完走、リタイアという結果でした。


前回、今年の5月は最終第3チェックポイントで33秒足らずのリタイアでしたので
今回は何がなんでもまた完走したいという気持ちで臨みました。


















14日(土)、車で長野県木曽郡王滝村へ向かいます。

フロントウインドーの「あなごさん」も勇んでいるようです。



















無事にスタート地点でありメイン会場の王滝村松原スポーツ公園に到着。

レースの注意事項や、コースの状況などがアナウンスされます。

崖崩れなど危険個所がアナウンスされる度に、
不安であると共にアドベンチャー感が増幅されていきます。



















ゼッケンを装着して準備万端!

振動や風圧で外れたり、走行の妨げにならないように場所を選んで
慎重に取り付けます。

これでバイクの準備は完了です。




















と思いきや、
仲間のバイクにトラブル発生!

油圧式ディスクブレーキのパッドが開かずホイールが装着出来ません・・・。

見たところオイルの量が多過ぎてパッドが戻りきっていなかったので、
オイルを少し減らして事なきを得ました。

現場に着くまでにバッチリメンテナンスをすることも、とても重要です。

僕の場合は前の週の週末にリアサスペンションのオーバーホールなどを実施。
切れては困るチェーンを交換、
タイヤも新品に交換、
各部を点検して不具合が無いことを確認していました。

ちなみにタイヤは初めて使う
Continental(ドイツ)のX-KING プロテクション 29×2.2を使用しました。

サイドが強化されているプロテクションタイプなので、
サイドカットしやすい王滝の路面には最適だろうというチョイスです。
(・・・実は王滝に最も向いていると言われている同社のRACE-KINGと間違って購入。。。
結果的には、今回のマッドな路面には最適でした。)

100km、しかもオフロードとなると振動からのトラブルなど普段では起きないような
トラブルが発生します。
あんな山奥で、しかも工具が不十分な状態では対応出来ないことが多いので、
なおさらしっかりとしたメンテナンスが必要です。



















宿泊はいつもの旅館「たかの湯」さん。
ご飯をガッツリおかわりしてカーボローディングしてエネルギーを蓄えます。
























夜のうちに補給食をセッティング。
フレームバックとバックパックに分けて入れておきます。

この他に、魚肉ソーセージとあんぱんを忍ばせておきます。

3時半起きなので、22時には夢の中。。。



















朝6時のスタートに合わせ、5時半にスタート地点に到着。

当日は猛威をふるった台風18号の影響が充分に考えられたので、
出場を辞退したライダーもいたでしょう。




先着順でスタート位置に並べられるので、案の定ほぼ最後尾からのスタートです。


100kmクラスのエントリー数は987人。

120kmクラス(出場条件は100kmを7時間以内に完走した人のみという、変態クラス)の71人も同時スタートなので、かなりの数でのスタートとなります。



















スタート直前に懸念していた雨がポツポツと・・・

朝早いため寒さもあり、上半身のみ雨具を着て、


6時ちょうど、100kmの自己発見の冒険がスタート。


まずは33kmの第1チェックポイント(CP)を、
制限時間4時間以内に到着することを目指します。












まずは距離にして10km以上、ひたすらひたすら、登っていきます。

気温が上がってくるため身体も暑くなってくるのですが、
雨もぱらぱら降ったり止んだりしているので
雨具を脱ぐか、着たまま我慢するか、微妙なところ。

何せ台風が迫ってきているので、
時おりザっと降ったり、風が強まったり、
普通のレースならば即中止の状況ですが、
これはアドベンチャーレース。
よほど危険にならない限りは自己責任でレースは続行されます。

流れに乗って走っていることもあり
ストップして雨具を脱ぐのはタイムロスにもなると嫌なので、
少し暑いですがそのまま走ります。



















今回とは逆回りの5月だと最終第3CPにあたる、
大きな川を渡る場所に到着。
5月はここでタイムオーバーでリタイアとなった悔しい場所です。

この時点ではまだ大雨にはなっていなかったので、
川の水位も低いままです。

後に大洪水となったと思われます・・・。


写真にも写っているGTジャージのライダーは僕の同僚の弓田氏で、
後に僕を救ってくれることになる、
今回の冒険の同行者ともいえる存在です。






















1つ目の大きな山を越えたところで、1回目の休憩。
路肩にストップし、雨具を脱ぎ、補給食を摂り、体制を整えて再スタート。


第1CPに向かう大きな登りが始まったすぐの所で、
路肩に停まって助けを求めていると思わるライダーさんがいました。

パンクをしてしまったようですが、
よくよく聞いたところ2回のパンクでチューブを使い果たし、
パンク修理用のパッチも持っておらず途方に暮れているとのこと。
ここから押して歩くにも第1CPまではまだ10kmはあります。

29er(29インチタイヤ)でしたのでちょうど僕もそれを使っており、
予備チューブ2本にパンク修理パッチも持っていることもあり
その方にチューブを1本お貸しすることにしました。

「困った時はお互い様ですから、後で僕が困っていたら助けて下さいね!」

そう言ってチューブを渡し、無事完走してチューブを返しに来てくれるように
お互いの健闘を誓い合ってその場を後にしました。


その後は順調に走っていき、

スタートから3時間36分経った9時26分、

制限時間4時間以内の第1CP(33km)に無事に到着しました。
























目標としては3時間30分でしたので、予定通りです。

少し遅れて同僚の弓田氏も無事に到着しました。

残念ながら他に一緒に出場していた同僚2名は、
ここで時間切れでリタイアとなっていました。

写真のGARMINに付いた雨粒をご覧の通り、
第1CPの前後は激しい雨に遭いました。


正直、この時点で内心では・・・

ここまでは何とか予定通りに来たけど、まだやっと1/3。

この尋常じゃ無い大雨で、しかも雨に濡れて寒い・・・

ヤバくないか?

もしかしたら、何年か前みたいに中止になるんじゃないだろうか。

もしそうなったら、正直助かる。

たぶん、このまま走っても最後まで体力も気力も続かない・・・。

完全に弱気になっていました。


そんな時には必ず、救世主が現れると決まっています。


・・・ん?




















愛媛ライダーズ!!

この方々と出会ったのは今から2年半前。

僕が主催したマウンテンバイクスクールに参加したことをきっかけに、
ロード乗りだった方々がマウンテンバイクにのめり込んだ瞬間でありました。
(今も両方乗ってらっしゃいます)

僕のFacebookのプロフィール写真は、その時にみんなで撮った写真です!





その中のYさんが、寒さによる体調不良によりリタイアを考えていました。

「もう、あかん。」



















ですが、みんなの励ましによって、
走れるところまで行ってみようということになりました。

僕もその姿にパワーをもらい、また走りだそうと思いました。

同僚の弓田氏と共に豪雨の中、
9時45分頃、第2CPを目指し再スタート。


そこからの天候は台風の影響で最も荒れていました。

こんな土砂降りのなか自転車に乗ったのは初めてだと思ったくらいの大雨。

第1CPから三浦貯水池までは全体的に下りなので、
サングラスをしないと下りでは泥水が目に入って前が見えず、
かと言ってサングラスをしていると雨粒で見えない・・・。

よく見えていないなかでも
この辺りの路面はこぶし程の大きさの岩がゴロゴロ転がっているのはわかり、
ほとんど捨て身で下っていきます。

パンクなどのトラブルのライダーも多くいたので、
見えていたら逆に恐いくらいの路面だったでしょう。

下り区間がちょうど終わった地点で、
前方から大会関係者の軽トラックが走ってきました。

「もしやこれは、レース中止のアナウンスをしに来たのか?」

もしそうであれば、やっと楽になれる・・・

と思ったのですが、何も言うことなく通過していきました。


















あまりの大雨と下りで冷たい風に当たっていたことにより寒さと体力の消耗を感じたので、
三浦貯水池の外周路に入ったところの木陰でストップして休憩。

しばらくするとちょうど雨も止んできたので、
雨具を脱いで補給食を摂って、
SDA王滝で唯一の平地区間をスタート。

平地区間では29erの巡航性能の高さが引き立ちますが、
体力を消耗していたため大きな車輪を回すパワーが・・・。

そのため、平地でタイムを稼ぎたいところでしたが体力の消耗を抑えた走行を心掛けました。



















平地区間が終わり、ここから第2CPに向かうのが自分にとっては一番の難所。

山を2つ越えるために、ひたすら登ります。


カーブが来る度に「これで登りは終わりか!?」
と思ってもまだ登る。

ひたすら登りまくります。



















やっと1つ目の山の山頂付近に到達。
眼下に見える三浦貯水池の向こう側の岸を走ってきました。

写真のとおりすっかり天気は良くなってきて、
GARMINのログデータを見てもここから一気に気温は
一気に10℃も上がっています。

今までとは逆に暑さとの闘いになってきました。


ここから登って来た分を1度下り、
後半最大の登り区間に突入します。


登る距離的にはスタート~の登りが最も長いですが、
このころにはすっかり体力は消耗、
気力は減退、
心は何度も折れ、

そんな状況での登りは非常にキツイものがあります。

そしてこの頃は
同僚の弓田氏とは常にお互いが見える距離を走り、
片方が疲れてストップして休憩し、
また片方が休憩したら追い付いて、
というような絶妙な関係を築いていました。

声を掛け合うような気力はほとんどありませんが、
仲間の姿が見えるだけで「もうひと踏ん張り」の気力が湧き出てきます。



















登りではどんどん抜かれますが
マイペースを保ち、
かつタイムリミットを気にしながら、
これ以上ペースを落とすわけにはいきません。

2つ目の大きな山を登り、
そこから一気に下り、

スタートから6時間40分経った12時40分、

第2CP(68km)に無事到着。



































制限時間の13時までは20分よど余裕はありましたが、
前回9月にリタイアした時はこの第2CPを13時10分にスタートしたら
第3CPに15分ほど間に合いませんでした。

つまり、
僕の実力からすると12時50分にはスタートしておかなければなりません。


同僚の弓田氏もほどなく第2CPに到着。

実はその9月リタイアの時も弓田氏はこの第2CPから一緒に走って
共にリタイアした仲なので、
時間のことは分かっています。

そのことはココでは口にしませんでしたが、
トイレと補給を済ませてから少しだけ座って休憩し、

12時50分、最後の関門である第3CPへ向けてスタートしました。



















正直なところ、ギリギリの残り時間です。

1回でも転んで負傷したり、
パンクをして修理をしていたら、まず間に合わないでしょう。

美しい景色の写真を撮っている時間も無い。

ただひたすらペダルを漕ぎます。

同僚の弓田氏は走りを見ていても
さっきまでよりも疲れているのは明らかで、
途中ストップする回数も増えています。

その度に僕は抜いていきますが、
僕も余裕は無いので途中で止まり、
抜きつ抜かれつ、
一緒に走り、
そんなことを繰り返して、
お互いの存在や様子を気にしながら
とにかく制限時間内に第3CPに到着することに集中して走りました。


この第2CP~第3CPまでの区間は、
距離も12kmしか無く、
登り区間は短く、
細かいアップダウンを繰り返した後に
後半は一気に下っていくタイムトライアル的な区間です。

GARMINにあらかじめ入れておいた今回のコースを見ると
この先にどんなアップダウンが何回あるかが高低表として表示出来るので
その高低表を見ながら

「弓田さん、あと2つ越えたら下りだよ」

と声を掛けて気力を持たせます。

「これで最後!」

と思ったら・・・目の前にはまた登り・・・

「ごめん・・・高低表を見間違えた・・・」

ここで少し焦ります。

タイムリミットがかなりヤバい・・・。

もうここからは行くしかありません。

頑張ってもう1つ登りを越えて、
あとはひたすら下ります。

とんでもなく長い長い下りでした。

最高時速は40km、
本来ならもっと速度を高められるはずなのですが、
後から気がついたのはフロントサスペンションの空気圧を高くし過ぎていて
100mmストロークのサスペンションが半分の50mmしか動いていなかったのです・・・。

その影響で路面からの激しい衝撃をもろに受けていたため
とくに手が痛くてこれ以上スピードを出せませんでした。

激しい下りでは
途中でパンクをしてストップしているライダーが点々としています。

ですがパンクを覚悟で荒れまくった下りをひたすら進みます。

当初はミスだと思ったタイヤのセレクトも、
サイドグリップが強いタイヤなので下りでの安定感もあり
コーナーも思いっきり突っ込めます。

時々後ろを振り返り弓田氏が来ていることを確認し、
それと同時に時計を見て時間を確認します。

正直あと何kmで第3CPなのかはわかりませんでしたが、
とにかくあと数分しか残っていないことは間違いない。

そしてついに
「もうすぐチェックポイント」
の看板が!

この看板はクセモノで、
もうあと1kmはあるはずです。

スピードを緩めることなく突き進み・・・



















やった!!!!


制限時間5分前の14時55分、最終第3CP(80km)になんとか到着することが出来ました。


スタートから7時間55分経っていました。



















僕たちの後にも数名のライダーが制限時間内に通過していましたが、
制限時間後にも何人ものライダーが通過していきました。

タイムアウトになったライダーの方々は悔しそうな表情をしています。

それは当然のことでしょう。
ここまで8時間掛けて走ってきたのに、
ここから最後のゴールまで行けずに
ここでリタイアとなって帰らなければならないのですから。

僕たちはその方々の分まで
精一杯走ってゴールを目指さなければなりません。



















第3CPに到着すると、
愛媛ライダーの方々も無事に制限時間内に通過していました!

また無事にゴールしてから会いましょうと約束し、
愛媛ライダーさん達はゴールに向けてスタートしていきました。

僕たちもそんなにのんびりしている時間はありません。

残りの最終区間
第3CP~ゴールまでの制限時間もあるのですから・・・。


そして15時10分、

最後の冒険に向けて
弓田氏と共にスタートしました。

休憩しているうちに、
残っているのは僕と弓田氏の2人になっていました。

最後尾からのスタート、
つまり後ろには誰もいません・・・。

追ってくるのは制限時間というものだけです。




















第3CPから誰に抜かれることも抜くことも無く2つの山を登り、
いよいよ最後の長い下り。
これを下れば、
ゴールが待っています。
残り時間も問題無し。


ここからはアドレナリン全開、
気持ちよく下っていきます!
























スタートから9時間33分、
制限時間27分前に
弓田氏と共に16時33分にSDA王滝を完走!!




















達成感、半端なし!!







成績は
最後の下りで2人抜いたのですが、
見事にビリから3番目です(苦笑)。

987人のエントリーで、
悪天候のため出走しないで帰った方もいるとは思いますが
完走者は586人ということで完走率は5割台と低かったです。

この天候で完走出来たというのも
とても自信に繋がりました。


ところで、
今回のSDA王滝100kmは
自分の中にいくつかの思いを持って挑戦しました。


1つは、

前回5月のSDA王滝100kmでリタイアしてしまったことに向けて
自分へのリベンジ。
もう1度挑戦して、折れてしまった5月の自分を越えることでした。


2つ目は、

ある友達に
元気と勇気を与えたかったこと。
それについて詳しくは書きません。


以前から何回も書いていることですが、
僕はとても運動音痴で、

体育の成績は5段階中2とか3でした。
泳げない、
鉄棒で前回りも出来ない、
マラソン大会は途中から歩き、
100m走でもビリ・・・。

周りのライダーの方々は
アスリートのような方も多く、
なにせ同僚の弓田氏も元陸上部で県大会に出場していたようなアスリート。

そんなライダー達をもってしても完走率は毎回7割程度のレースなのです。

だけどそんな僕が、
日本で最も過酷なこのマウンテンバイクレースに挑戦している姿を見て、
1人でもいいから勇気や元気をもらってくれて、
このレースに挑戦してみたり、
レースじゃなくても何か頑張ろうと思ってくれたら良いなと思って
あえてこんな辛いレースに挑戦し続けています。

元気や勇気なんて、
他人から見ればそんな大そうなことをしているわけではありませんが、
少しでもそれを感じてくれたらなと思っています。

そのためにも
どんなに途中辛くても
みんなが応援してくれている、
こんな所でくたばってたまるか、
なにくそ~!と
また前に進むことが出来ました。

元気や勇気を
逆にたくさんもらっていました。

本当に
みなさんありがとうございます。




そして、





奥さんに書いてもらった

「ガンバレ!!やせるんだ!!猫印」

辛いとき、何度もこのメッセージを見て
元気をもらいました。

奥さん
ありがとう!!

(ちなみに体重は・・・このあと1晩に2食食べたのでチャラです(笑))


また来年5月・・・

今は
「もう嫌だ・・・」
と思っていますが、
きっとまたスタートラインに立っていることでしょう。


このブログを見た
新しい挑戦者と共に。





Fin.

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